国際サリドマイドシンポジウムに向けて

サリドマイド障害を抱えた当事者と、何も抱えていない一般の人では、完全に同じ視点でその問題点を見つめるのはなかなか難しいかもしれません。
さらに、同じサリドマイド当事者であっても、障害の程度が軽いとか重いとか、体のどの部位に障害を負ったかとか、経済環境や家庭環境などによっても問題意識は異なります。

私は両腕と両足に著しい欠損を負いました。
残念なことに、日本で認定されたサリドマイドの中で、私と同等の足の障害を持つ人はいませんでした。
外に出るには車イスが不可欠ですが、サリドマイドの集まりに参加しようと思っても会場がまったく車イスでは近寄れない設定になっていることがたびたびあって、そのたびに「ああ、私は部外者扱いなんだ」と思い知らされました。
たった一人しかいない車イス利用者のために会場を配慮できないということだったのでしょう。
それがずっと続いてきたので、私はサリドマイドの親睦会だのフォーラムだのという案内状を受け取るたびに、不満や不信感が静かに蓄積していくのを感じていました。
今回、増山ゆかりさんからこの活動にお誘いをいただくまでは、私はもう今後サリドマイドの人たちに関わることは一切ないだろうと思っていました。
実際、親しい人もいないし、先述のとおり、集まりに参加する機会も奪われてきたし、今さら参加したとしても話が合わないだろう。
そう思ってきたし、今もこの思いを覆すには至っていません。

でもこれは仕方のないことです。
他人が何に困っているのかなんて私たちは簡単には想像できませんから。

それではドイツではどうなのでしょうか。
日本の約10倍ほどの被害者がいるドイツでは、当事者間の格差はさらに複雑に複合しているのではないかと思います。
けれど彼らは団結して、薬禍の発生から60年が過ぎた今、あらためてサリドマイドの二次障害を訴えて世論を動かすことに成功しました。
どうやって団結できたのでしょうか。
意思疎通をはかり、呼びかけあい、互いの環境のギャップにどう折り合いをつけていったのか。

2025年10月、そのドイツの当事者の方たちと国際シンポジウムという形で情報交換できる機会が与えられました。
シンポジウムの会場は東京です。
私は、上記した当事者間の格差について、どう向き合っていかれたのかをぜひ聞いてみたいと思っています。
とはいえ、若い頃と違って、車イスで長距離の旅に出るのはホテルや交通機関の手配だけでかなりのストレスです。
いろいろと不安が尽きません。
唯一の救いは、増山さんがかなりバリアフリーを意識して会場探しをしてくださってることです。
このことがどれだけ私の背中を押してくれてるかわかりません。
10月。一度は放棄しようと思ったサリドマイド当事者たちとの関りがどうなっていくのか、また、私自身の気持ちがどう変わっていくのか、いろんな発見を期待して上京しようと思っています。

中野寿子 http://marobine.holy.jp

国際サリドマイドシンポジウムは10月中旬に東京都内で開催の予定。